「理学療法士の実習が変わった」と聞いたことはありませんか。養成校の指定規則やガイドラインの見直しにより、現在の臨床実習は、ひと昔前とはかなり違う形になっています。
私は理学療法士として10年以上働き、実習指導者として旧形態・新形態の両方の実習を受け入れてきました。この記事では、制度として何が変わったのかと、実際に指導して感じた良い点・気になる点を本音で書きます。
実習制度はこう変わった
2020年度の入学生から適用された指定規則・ガイドラインの見直しで、臨床実習には主に次のような変化がありました。
- 実習時間が管理されるようになった:実習時間はおおむね1日8時間・週40時間程度が目安とされ、自宅での課題も含めて過重にならないよう管理されます。
- 課題は実習時間内が基本に:徹夜でレポートを書かせるような運用は見直され、デイリーやレジュメの作成時間を実習内に確保する実習地が増えました。
- 実習指導者の要件が明確になった:実習指導者は、一定の実務経験に加えて臨床実習指導者講習会の修了が求められるようになりました。
- 診療参加型(クリニカルクラークシップ)が推奨に:「見学→模倣→実施」と段階的に診療へ参加していくスタイルが推奨されています。
制度の詳細は、厚生労働省の理学療法士作業療法士学校養成施設カリキュラム等の見直しに関する資料で確認できます。
新実習を指導者として経験して分かったこと
私は評価実習で、新形態の実習生と旧形態の実習生を同時期に受け入れた経験があります。両方を間近で見比べたからこそ分かったことがあります。
良かった点:学生がしっかり眠れている
新形態の実習生は、課題を実習時間内に進めるため、自宅での作業が1時間程度で済んでいました。睡眠が確保できているので、日中の集中力も安定していました。実習がつらすぎて業界を去る学生を減らすという意味で、これは間違いなく良い変化です。
指導者側にとっても、学生がずっと見学で張り付く形ではなくなるため、負担が分散されるメリットがありました。
気になった点:患者さんに触れる時間が減る
一方で、はっきり感じたデメリットもあります。課題の作成時間を実習時間内に確保するぶん、患者さんを見る・触れる時間が旧実習よりも減ることです。実習終盤には、半日を資料作成に使う日もありました。
症例発表を見ていても、患者さんと関わった時間の差は、考察の厚みに表れます。臨床の感覚は、患者さんと接した量からしか育たない部分がどうしてもあります。ここは新実習の構造的な課題だと感じています。
実習生へのアドバイス:患者さんと関わる時間を最大化しよう
- 資料作成を効率化する:デイリーやレジュメを早く仕上げるほど、患者さんを見る時間が増えます。型を作って時短しましょう。
- 見学を受け身にしない:「次は何を見たいか」を毎日バイザーに伝えると、経験の密度が上がります。
- 疑問はその日のうちに聞く:時間が管理されている実習では、持ち帰って調べる時間も限られます。その場で聞く力が大事です。
課題を早く仕上げる具体的な方法は、実習でデイリーやレポートを早く書くコツとおすすめツールにまとめています。
これから指導者になる人へ
これから実習指導に関わる人は、臨床実習指導者講習会の受講が前提になります。「自分が学生の頃の実習」をそのまま再現しようとすると、今の制度とはずれてしまいます。時間管理と段階的な参加を前提に、限られた時間で何を経験させるかを設計するのが、今の指導者の腕の見せどころです。
よくある質問
- 旧実習との一番の違いは何ですか?
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時間管理の徹底です。実習時間と自宅課題の量が管理され、「夜通しレポート」が前提の実習ではなくなりました。あわせて、指導者の要件や診療参加型のスタイルも整備されています。
- 新実習は楽になったということですか?
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体力的な負担は確実に減っています。ただし限られた時間で学ぶ密度が求められるため、受け身で過ごすと得られる経験が少なくなります。楽になったというより、主体性が問われる実習になったと感じます。
- レポートは完全になくなったのですか?
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実習地や養成校によります。従来型の長大なレポートからレジュメ中心へ移行した実習地が多いですが、形式は一律ではありません。実習要項で確認してください。
まとめ:制度は変わっても「患者さんから学ぶ」は変わらない
実習制度は、時間管理・指導者要件・診療参加型という方向で大きく変わり、学生の負担は減りました。一方で、患者さんと関わる時間が減りやすいという課題もあります。
制度がどう変わっても、臨床の力は患者さんとの関わりの中でしか育ちません。実習生のみなさんは、効率化できるところは効率化して、患者さんの前にいる時間を大切にしてください。
