どうも、リハ助マンです。
理学療法士として働いていると、患者さんとのコミュニケーションに悩むことがあります。
特に学生や新人PTの頃は、患者さんとの会話が続かず、気まずい沈黙が流れてしまうこともありますよね。
先輩やバイザーから、
- 声が小さい
- 患者さんにもっと質問して
- 会話が続いていない
- コミュニケーションを取って
などと言われた経験がある人もいると思います。
でも、「コミュニケーションを取って」と言われても、具体的に何をすればいいのか分かりにくいんですよね。
コミュニケーション能力というと、「話がうまくないとダメなの?」と思うかもしれません。
でも、そんなことはありません。
理学療法士に必要なのは、会話を盛り上げる力よりも、患者さんの話を聴き、困っていることを一緒に整理する力です。
私も、もともと話すのが得意だったわけではありません。それでも、臨床経験を積みながら少しずつ患者さんとの接し方を学んできました。
今回は、理学療法士に必要なコミュニケーション能力と、患者さんとの会話・問診のコツを、実際の経験を交えながら紹介します。
理学療法士に必要なコミュニケーション能力とは?
理学療法士に必要なコミュニケーション能力は、単に「よくしゃべること」ではありません。
私は、大きく分けて次の4つが必要だと考えています。
- 聴く力:患者さんの話を途中で遮らずに聴く
- 質問する力:痛みや生活上の困りごとを整理する
- 伝える力:評価や治療内容を分かりやすく説明する
- 観察する力:表情、声の調子、反応の変化に気づく
会話が得意でも、患者さんの話を聴かずに自分ばかり話してしまえば、臨床で必要なコミュニケーションとは言えません。
反対に、口数が少ない人でも、患者さんの話を丁寧に聴き、必要なことを確認できれば、十分に信頼される理学療法士になれます。
理学療法士にコミュニケーション能力が必要な3つの理由
- 患者さんとの信頼関係をつくるため
- 問診から問題点を探るため
- 目標と治療方針を共有するため
1.患者さんとの信頼関係をつくるため

理学療法士は、患者さんの身体に触れたり、痛みのある動作を確認したりしながらリハビリを進めます。
そのため、患者さんに「この人になら安心して相談できそう」と感じてもらうことが大切です。
私が初回リハビリで意識しているのは、無理に相手を楽しませることではありません。
患者さんが話しやすい雰囲気をつくり、今何に困っているのかを一緒に確認することを大切にしています。
理学療法における患者さんと療法士の良好な関係は、治療への参加や満足度、一部の治療結果と関連する可能性が報告されています。
もちろん、信頼関係ができれば必ず痛みが改善するわけではありません。それでも、患者さんが不安や生活上の困りごとを話しやすくなれば、より適切な評価や目標設定につながります。
2.問診から問題点を探るため

理学療法の評価では、関節可動域や筋力、動作などを確認します。
でも、その前に大切なのが問診です。
例えば、肩が痛い患者さんでも、困っていることは人によって違います。
- 服を着るときに痛い
- 仕事で荷物を持つと痛い
- 夜中に痛みで目が覚める
- 趣味のスポーツができない
- いつ治るのか分からず不安
これらは、身体を触ったり動かしたりするだけでは分からない情報です。
患者さんの話を聴きながら、必要な部分を質問で深掘りすることで、評価すべきポイントが見えてきます。
つまり、問診は評価前の雑談ではなく、理学療法評価の一部なんですよね。
3.目標と治療方針を共有するため
理学療法士が考える目標と、患者さんが望んでいることが同じとは限りません。
理学療法士は「肩関節の可動域を改善したい」と考えていても、患者さんは「仕事で重い荷物を持てるようになりたい」と思っているかもしれません。
専門的な評価を行うことは大切ですが、その結果を患者さんの生活とつなげて説明する必要があります。
「今日は何をするのか」「なぜこの運動が必要なのか」「どこを目標にするのか」を共有できると、患者さんもリハビリに取り組みやすくなります。
初回リハビリで意識したい6つの流れ
初回リハビリでは、何を話せばいいのか分からず緊張しやすいと思います。
そんなときは、次の順番を意識すると進めやすくなります。
- あいさつと自己紹介をする
- 現在困っていることを確認する
- 自由に話せる質問をする
- 必要な部分を具体的に質問する
- 聞いた内容をまとめて確認する
- 評価・治療内容を説明する
最初は答えやすい質問から始める
いきなり細かい質問を続けると、患者さんも緊張してしまいます。
まずは、
「今日は肩の痛みについて、詳しくお話を聞かせてください」
「今、一番困っていることは何ですか?」
など、自由に答えられる質問から始めます。
そのあとに、
「痛みが強いのは、腕を上げるときですか?」
「夜中に痛みで目が覚めることはありますか?」
「仕事では、どれくらいの重さの物を持ちますか?」
など、具体的な質問で必要な情報を確認します。
最後に要約して確認する
質問をして終わりではなく、聞いた内容を短くまとめて確認します。
「仕事で重い物を持ったあとに痛みが強くなり、特に夜がつらいということですね」
この確認があるだけで、理学療法士と患者さんの認識がずれていないかを確かめられます。
患者さんから「そこは違う」「もう一つ困っていることがある」と追加の情報が出てくる場合もあります。
私が初回リハビリで意識した患者さんとの会話
ここで、私が経験した初回リハビリの一例を紹介します。
※個人が特定されないよう、状況の一部を変更しています。
肩の痛みで受診した患者さんを、夜の診療時間に担当したときのことです。
患者さんは少し無口で、こちらの質問には答えてくれますが、会話はあまり続きませんでした。
表情を見ると、かなり疲れているように感じました。
そこで、
「今日はお仕事帰りですか?少しお疲れに見えます」
と声をかけてみました。
すると患者さんから、朝が早かったことや、仕事で重い物を持つことを話してくれました。
そこから仕事内容や痛みが出る動作を聞き、問診を進めることができました。
次のリハビリでは、
「今日は前回より少し表情が明るいですね」
「今日も荷物を持つ仕事が多かったですか?」
と、前回聞いた内容をもとに会話を始められます。
患者さんの仕事や生活を覚えていると、「自分のことを気にかけてくれている」と感じてもらえることがあります。
特別に面白い話をする必要はありません。相手を観察し、興味を持って話を聴くことが大切です。
患者さんとの会話で使える5つの基本
- 話を途中で遮らない
- 質問したあとは答えを待つ
- うなずきやあいづちを使う
- 表情や声の調子も観察する
- 聞いた内容を要約して確認する
沈黙を怖がりすぎない
質問したあとに沈黙が続くと、ちょっと焦りますよね。
でも、患者さんは答えを考えているのかもしれません。
すぐに次の質問を重ねるのではなく、少し待ってみることも大切です。
沈黙があるからといって、コミュニケーションに失敗しているわけではありません。
アイコンタクトは無理のない範囲で
患者さんの顔を見て話すことは大切ですが、ずっと目を合わせ続ける必要はありません。
アイコンタクトが苦手な人もいますし、痛みや不安が強いときは視線を合わせにくい場合もあります。
患者さんの反応を見ながら、無理のない距離感で接しましょう。
よく話す患者さんへの対応

よく話す患者さんの場合は、基本的に患者さんの話を聴きながら、次のような反応を返します。
- 笑顔や自然な表情
- うなずき
- あいづち
- 話の内容に合わせた質問
ただし、話が広がりすぎて問診やリハビリが進まなくなることもあります。
そんなときは、無理に話を遮るのではなく、一度内容を受け止めてから本題へ戻します。
「ありがとうございます。お仕事の状況がよく分かりました。肩の痛みについて、もう少し詳しく確認させてください」
このように伝えると、患者さんの話を否定せずに問診へ戻りやすくなります。
あまり話さない患者さんへの対応

患者さんがあまり話さないと、「何か話さないと」と焦ってしまうことがあります。
私も新人の頃は、沈黙を埋めるために自分の話をしてしまうことがありました。
でも、患者さんは必ずしも雑談をしたいわけではありません。
質問に必要な範囲で答えて、静かにリハビリを受けたい人もいます。無理に会話を広げなくても大丈夫です。
答えにくそうな場合は、質問を具体的にしてみましょう。
「痛みは動かしたときと、じっとしているときでは、どちらが強いですか?」
「朝・昼・夜では、いつが一番つらいですか?」
「今日は少しお疲れですか?無理にお話ししなくても大丈夫ですよ」
また、会話が少ない理由が性格だけとは限りません。
- 痛みや不安が強い
- 疲れている
- 耳が聞こえにくい
- 言葉が出にくい
- 質問の意味が分かりにくい
- 初対面の人に緊張している
こうした可能性も考えながら、患者さんのペースに合わせることが大切です。
苦手だと感じる患者さんがいるのはおかしくない
理学療法士として働いていると、「この患者さんとは少し話しにくいな」「何を話せばいいのか分からない」と感じることがあります。
でも、それ自体はおかしなことではありません。
理学療法士にも患者さんにも、それぞれ性格や価値観があります。会話のテンポや考え方が合いにくいこともあります。
大切なのは、「苦手だから避けよう」と考えるのではなく、なぜ話しにくいと感じているのかを整理することです。
- 反応が少なく、会話が続かない
- 話が広がって問診が進まない
- 要望が強く、どこまで対応すべきか迷う
- こちらの説明が伝わっていない
- 痛みや不安が強く、患者さんにも余裕がない
- 会話のテンポや性格が合いにくい
原因を分けて考えると、対応方法も見つけやすくなります。
例えば、説明が伝わっていないなら、専門用語を減らしたり、図や動作を使って説明したりできます。
要望が強くて対応に迷う場合は、自分一人で抱えず、先輩や上司、医師などに相談することも必要です。
苦手意識を持った自分を責めすぎなくて大丈夫です。まずは「何に困っているのか」を整理してみましょう。
患者さんとのコミュニケーションで避けたい5つの行動
- 自分の話ばかりする
- 質問を続けて尋問のようになる
- 患者さんの話を途中で否定する
- 専門用語で一方的に説明する
- 沈黙を恐れて話し続ける
自分の話ばかりしない
患者さんとの共通点が見つかると、自分の経験を話したくなることがあります。
もちろん、少し自分の話をすることで患者さんが安心する場合もあります。
ただし、気づいたら理学療法士ばかり話していた、という状態には注意が必要です。
自分の話をしたあとは、患者さんへ話題を戻しましょう。
質問を詰め込みすぎない
問診では必要な情報を集めますが、質問を次々に続けると、患者さんは尋問されているように感じるかもしれません。
質問したら一度話を聴き、うなずきや要約を挟みながら進めることが大切です。
コミュニケーションが苦手な新人PTの練習方法

コミュニケーションが苦手だからといって、理学療法士に向いていないわけではありません。
話すのが得意かどうかと、相手の話を丁寧に聴けるかどうかは別の能力です。
私も、もともと人前で話すことが得意だったわけではありません。グループワークで司会役をしてみたり、患者さんとの問診を振り返ったりしながら、少しずつ慣れていきました。
新人PTには、次のような練習方法がおすすめです。
- 先輩PTの問診を観察する
- よく使う質問を準備しておく
- ロールプレイで練習する
- 先輩からフィードバックをもらう
- 毎日一つだけ振り返る
質問の型を準備しておく
患者さんを前にして頭が真っ白になるなら、よく使う質問を準備しておきましょう。
- 今、一番困っていることは何ですか?
- いつから症状がありますか?
- どのような動きで症状が出ますか?
- 仕事や家事で困ることはありますか?
- どこまでできるようになりたいですか?
すべてを機械的に質問する必要はありませんが、基本の型があるだけで落ち着いて問診できます。
一度に全部直そうとしない
「声が小さい」「質問が少ない」「説明が分かりにくい」と一度に指摘されると、何から直せばいいのか分からなくなります。
まずは、
- 今日は患者さんの話を途中で遮らない
- 最後に一度要約する
- 専門用語を一つ減らす
など、一日一つだけ意識してみてください。
焦らなくても大丈夫です。臨床経験と振り返りを重ねることで、少しずつ自分なりの接し方ができてきます。
コミュニケーションは臨床技術を生かす土台

理学療法士は、どうしても評価方法や治療技術に目が向きやすい仕事です。
もちろん、臨床技術を高めることは大切です。
ただ、高度な治療技術を持っていても、患者さんが困っていることや目標を把握できなければ、適切な理学療法にはつながりません。
反対に、会話が得意なだけでも十分ではありません。
評価・治療技術とコミュニケーション能力の両方が必要です。
コミュニケーションは、臨床技術と比べてどちらが上か下かというものではなく、持っている臨床技術を生かすための土台だと私は考えています。
理学療法士に必要なコミュニケーション能力のまとめ

理学療法士に必要なコミュニケーション能力は、話を盛り上げる力ではありません。
- 患者さんの話を聴く
- 必要な情報を質問する
- 表情や反応を観察する
- 聞いた内容を要約する
- 評価や治療内容を分かりやすく伝える
こうした一つひとつのやり取りが、患者さんとの関係や理学療法の進めやすさにつながります。
コミュニケーションが苦手でも、焦る必要はありません。
私も最初から得意だったわけではありませんし、今でも「もっと違う聞き方ができたな」と思うことがあります。
まずは、患者さんの話を一つ丁寧に聴くことから始めてみてください。
無理に話を盛り上げなくても大丈夫です。一緒に少しずつ、臨床を楽しめるようになっていきましょう。
理学療法士のコミュニケーションに関するよくある質問
- コミュニケーションが苦手でも理学療法士になれますか?
-
なれます。話が得意であることより、患者さんの話を聴き、必要な情報を確認しようとする姿勢が大切です。問診の型を準備したり、先輩からフィードバックを受けたりすることで、少しずつ改善できます。
- 患者さんとの会話が続かないときはどうすればよいですか?
-
無理に雑談を続ける必要はありません。現在困っていること、症状が出る動作、仕事や生活への影響など、理学療法に必要な質問から始めましょう。質問したあとは、患者さんが答えるまで少し待つことも大切です。
- 苦手だと感じる患者さんにはどう対応すればよいですか?
-
まず、なぜ話しにくいと感じるのかを整理しましょう。反応が少ない、要望が強い、説明が伝わりにくいなど、理由によって対応が変わります。一人での対応が難しい場合は、先輩や上司、医師などに相談してください。
- 患者さんが話さない場合は雑談をした方がよいですか?
-
必ずしも雑談をする必要はありません。静かにリハビリを受けたい人もいます。必要な問診と説明ができていれば、沈黙があっても問題ありません。患者さんの表情や反応を見ながら、会話量を調整しましょう。
- 理学療法士は臨床技術とコミュニケーション能力のどちらが大切ですか?
-
どちらも必要です。コミュニケーションによって患者さんの困りごとや目標を把握し、評価・治療技術を使って解決を目指します。コミュニケーションは、臨床技術を適切に生かすための土台と考えるとよいでしょう。
参考文献
- The influence of the therapist-patient relationship on treatment outcome in physical rehabilitation
- The role of the therapeutic alliance on pain relief in musculoskeletal rehabilitation
- Patient-centred communication is associated with positive therapeutic alliance
※本記事は理学療法士としての臨床経験と公開されている文献をもとに作成しています。患者さんの状態やコミュニケーション方法には個人差があるため、それぞれの状況に合わせて対応してください。